『モモ』一柳慧 作曲 (1998年改訂初演) すんごいマイナーな作品。だって現代の作品だから。原作は「ネバー エンディング ストーリー」でも有名な【ミヒャエル・エンデ】の「モモと時間泥棒」。原作は子供達にも馴染みの深い作品で、いろんな劇団がお芝居にしたり、ミュージカルにしている。オペラ作品も沢山あるのかと思いきゃ、これだけらしい…。このオペラ作品はアリアやカヴァレッタのようなものはほとんど無く、『モノオペラ』の形式をとっている。高声部のキャラクターの音はやたらと高く、特に主役のモモや灰色の男1の音は「なんじゃこりゃ!?」と驚くばかり。現代オペラのマニアは「やるなあ」と感嘆すること間違いなし。普通のオペラファンは「!?」と驚くばかり。まぁ、見てみる価値はあります。 登場人物 モモ(S)…不思議な少女 マイスター・ホラ(Bs)…人間に時間を与えてるおじさん 灰色の男1(T)…時間貯蓄銀行のリーダー・言葉巧みに人々から時間を奪い取る。 灰色の男2(Br)…時間貯蓄銀行員・モモに時間銀行の秘密を漏らしてしまう 灰色の男3(T)…時間貯蓄銀行員 灰色の男4(Br)…時間貯蓄銀行員 フージー(T)…理髪師、ダリアさんに恋をしている。 ニコラ(Br)…左官屋 / ニノ(T)…居酒屋 カシオペア(Bs)…亀。マイスター・ホラに飼われている。道先案内亀。 ニコラの妻(A)…そのまんまニコラの奥さん。 ニノの妻(S)…これもそのまんま、ニノの奥さん。 子供達(女性アンサンブル)…モモの友達たち。 男女の客(混声アンサンブル)…ニノの居酒屋に来るお客さんたち。 語る男…名前の通り語る男。ストーリーを進行していく。
↓あらすじ↓ 遠い昔のようで、ひょっとすると未来かもしれない時代。どこかにある、どこにでもありそうな、小さな町での出来事。(こういった、設定の仕方が、かなり日本の演劇界的でしょ。) 第1幕 序 序曲は無く、幕が開くとコーラスの声、ア・カペラ。それは何かの役の声ではなく、我々人間の無意識から出てきたような声。言葉に耳を傾けると、こう言っている「静かな時間…いつも鳴り響いているから、誰も気を付けて聞きもしない。」誰の言葉だろう?私?あなた?彼?彼女?声は続く「時間という音楽は、いつも遠くから聞こえてくる。いつも心と響き合う。心は湖。吹きすぎる時間の風にさざ波を立てる深い湖。」いつの間にか人々の影が無くなり、そこには一人の男が立っている。語る男。彼はおもむろに語り出す。光のこと、音のこと、時間のこと、心のこと…。 町の円形劇場 円形劇場は、古くからヨーロッパの町々にある野外ステージだ。そこはかつて、町の人々が集まり、笑い声と笑顔が絶えなかった場所だ。でも、今はボロボロ…。一人の女の子が何日か前からこの円形劇場の【あなぐら】に住みだした。町のみんなが、その女の子と話をしている。町の人々の中には、居酒屋のニノ、その奥さん。左官屋のニコラ、その奥さん。それに理髪師のフージーの姿も見える。町の人たちは色々と女の子に質問をする。「家はどこ?」「お父さん、お母さんは?」「年はいくつ?」「名前は?」…結局わかったことは、この女の子の名前が「モモ」だということだけ…。町のみんなはモモのために、【あなぐら】に家具を持ってきてあげたり、かまどを作ってあげたりしました。 古い円形劇場の【あなぐら】に住むなんて話、そうある訳じゃない。しかも女の子が!けれど、そんな違和感も、町の人たちにはどうでも良いことだった。モモの周りにはいつも笑顔があふれていた。喧嘩をしていたニノとニコラも、モモにかかれば、すぐに笑顔になった。町の子供たちも楽しそう、今日は探検隊ごっこだ!「僕は一等航海士」「僕は海洋学の博士、きみは助手」「じょしゅ?」「私は水夫」「私は嵐」「私たちは怪物!」「それしゅっぱ〜つ!」ほらっ、み〜んな素敵な笑顔だ! 第2幕 理髪師フージーのお店 それは突然だった。灰色のスーツに灰色の帽子、書類入れを持った、この町では見たことのない人たちが、フージーの店にやって来た。彼らは時間貯蓄銀行の行員、人々の時間を集める人たち。一番最初に訪れたのは、理髪師フージーのところだった。銀行員たちはフージーの【時間の使い方】をたしなめた。「あなたは時間をまったく無駄に使っているんです!」「毎日2時間ずつ倹約するだけで、20年後には利子をつけて1億510万秒もの財産が!」これを聞いたフージーは即契約!フージーは時間を節約するために、小鳥のボタンインコを捨て、仕事もおしゃべりせずに、大好きなダリアさんにも会いに行かず、お母さんを養老院にいれた。…フージーは変わった。そして町の人たちも…。ニノの居酒屋は名前を変えた「スピードレストラン・ニノ」と。その店では誰もおしゃべりをしない。すごい勢いで食事をしている。子供を学習塾に入れて…大人たちは皆、仕事に明け暮れている。そして皆、口にする「時間は貴重だ!無駄にするな!」子供たちからも笑顔が消えた…。人々は一生懸命に働いて、1秒も無駄にしない生活をしたけれども、倹約した時間はいったい何処にいったのかは誰にも分からない。一日はますます短くなり、あっという間に時間が過ぎていった。 街角 子供たちは毎日毎日遊ぶこともなく、同じ時間に塾に通い、…モモは独りぼっち。「モモと遊んでいた頃が良かったなぁ。」子供たちはそんなことをつぶやく…。モモは子供たちのあとをつけていく…。そこには銀行員たちの姿が…。「お前は、ここから入ってはならない。」「どうして?」とモモ。銀行員たちは言う「お前は時間の秘密を知っているから。」そこで明かされる真実!「我々はうんざりしたんだ一人一人からチビチビ時間を集めるのは!」「今度は我々が世界を支配する!」人々の時間を操ることの出来る時間貯蓄銀行員は、実は人間では無く【時間泥棒】だった。 第3幕 どこにもない家 秘密を知ったモモを【時間泥棒】たちは追いかける。助けてくれたのは何と、亀!名前をカシオペアという。カシオペアはマイスター・ホラのペット、…使い。カシオペアに付いていったモモは、【どこにもない家】というヘンテコな名前の家に着く。そして、そこでついにマイスター・ホラと出会うことになる。モモはそこで時間がどんなモノかを考える。「静かな時間…いつも鳴り響いているから、誰も気を付けて聞きもしない。」「時間という音楽は、いつも遠くから聞こえてくる。いつも心と響き合う。心は湖。吹きすぎる時間の風にさざ波を立てる深い湖。」時間は…音楽。モモは気づく「わたしはずっと聞いていた!その時間という音楽!」マイスター・ホラはモモに世界を託す事を決意する。 マイスター・ホラはモモに【時間の花】を見せる。それは、マイスター・ホラが人間たちに与える時間の姿、…かたち。マイスター・ホラはモモに教える。【時間泥棒】たちが、一体何をしようとしているのかを。【時間泥棒】たちが、どうやって生き長らえているのかを。「奴らは【時間の花】を盗むんだ、そして、乾燥させて葉巻にする。奴らはそれをふかして生きているんだ。ごらん、奴らの周りの煙は全て人間の死んだ時間なんだ。」…驚くモモ。そして続けるマイスター・ホラ「奴らは、【時間の花】に毒を混ぜようとしている…。」マイスター・ホラはモモに教える、【時間泥棒】たちを倒す方法を…。「私は今から眠りにつく。…時間は止まる。そして、奴らは【時間の葉巻】が必要になり、奴らの時間貯蔵庫に向かうはずだ。おまえは、奴らのあとをつけて行き、その貯蔵庫の扉を閉めるのだ。【時間の葉巻】を吸えない【時間泥棒】たちは消滅する。…奴らが全て消えたら、貯蔵庫の扉を開けるのだ。」そしてモモには一輪の【時間の花】が渡された。「この花で1時間だけ、おまえは止まった時間の中で動くことが出来る。」 …制限時間は1時間…。 モモは大好きなみんなを守るため、マイスター・ホラの言う通りにした。…時間は止まった。マイスター・ホラの言った通り【時間泥棒】たちは慌てて貯蔵庫に向かった!あとをつけるモモ。そして時間貯蔵庫に着いた。【時間の花】の残された花びらは、あとわずか。【時間泥棒】たちが手にしている【時間の葉巻】は底をついた。「やめろモモ!」叫ぶ【時間泥棒】。貯蔵庫の扉は閉められた。…消えていく【時間泥棒】たち。モモは勝ったのだ。 再び貯蔵庫を開けるモモ。捕らわれていた【時間の花】を解放してやる。…声が聞こえる。町の人々の声だ…。新しい今日の始まりだ。 幕 この作品は台詞が多く、初演演出家・加藤直さんの色がかなり濃く出てきます。言葉遊びや、問いかけなんかは、なかなか普通の(皆が知っているようなメジャーな)オペラ作品には無いスタイルです。加藤直さんは『こんにゃく座』などで演出もされており、関西では『関西二期会』の【こうもり】、『ザ・カレッジ・オペラハウス』の【三文オペラ】などでも成功を収めています。私は個人的には、かなり好きなタイプの演出家さん。 さて、『モモ』の話に戻しますが、正直言うと「音、とりにくっ!」「音高っ!」「えっ、ん?今、何拍子?」の連続。歌い手を殺す気か!と、つっこみを入れたくなります。(これはもう、分かって頂くには、劇場に足を運んでもらうしか無いのですが…。)それでも、みんな頑張って作品に取り組んでいます。関西では今年(2004年)の関西歌劇団が初演になります。筆者は「灰色の男1」でした…きつかった…。 <他のオペラ作品>
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