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FF車のタックインとパワーアンダー

【はじめに】

ここでは、FF車の挙動の代表格とも言える、タックインとパワーアンダーに関して、理論的もしくは経験的に得た知識を述べたいと思います。

なお、一般道においてタックインやパワーアンダーの効果を顕著に感じ取れるような運転は、安全運転とは相反する恐れがあるため、各自ご判断いただき、安易に真似をすることのないよう、お願い致します。


【基本事項(1) 〜FF車とは〜】

ここを読んで頂いている皆さんはご存知だと思われるが、念のためFF車について説明しておく。

FF車とは、フロントにエンジンを搭載している車(ほとんどの車)の内、エンジンの力が前輪に伝わり、前輪が駆動力として作用する車である。

当然、ハンドルによる旋回も前輪で行うため、後輪は「支え」の役割のみ担っている。


【基本事項(2) 〜アンダーステアとは〜】


●基本的なアンダーステア

アンダーステアとは、旋回中の車の進行方向が、ハンドルの切れ角(=前輪の向く方向)よりも外側に振れる現象である。

右図の通り、旋回中の車両には常に遠心力が作用しており、速度が上がれば上がるほど遠心力は大きくなる。

ある程度の速度まではアンダーステアは生じないが、ある速度を超えると、遠心力の大きさが前輪のグリップ力(前輪の向き通りに曲がろうとする力)を超えてしまい、ハンドルの切れ角よりも車の進行方向が外側に振れる。これがアンダーステアの基本である。

ちなみに、低い速度域でハンドルの切れ角の通りに車が進んでいる状態をニュートラルステアという。

なお、ハンドルの切れ角よりも曲がりすぎている状態(アンダーステアと逆の状態)をオーバーステアというが、FF車は前輪で操舵、駆動の双方を担っているため、基本的にはハンドルの切れ角よりも内側に車が進むことはなく、オーバーステアは生じない。


●コーナー進入時のアンダーステア

コーナー進入時に、スピードを十分に減速せずに、かつ急ハンドルでコーナーに突っ込むと、旋回中のアンダーステアと同じような現象が起こる。

ただしここでは、旋回中のように「遠心力」が作用しているというよりかは、車が真っ直ぐ走り続けようとする「慣性力」が働いている訳である(右図を参照)。

この慣性力も、旋回中の遠心力と同様に、ハンドルの切れ角とは逆方向の力として働くため、車が実際に進む方向としては、ハンドルの切れ角よりも外側に振れることになる。


注)以上、旋回中とコーナー進入時に分けて、「遠心力」と「慣性力」と分けて書いたが、実際にはもっと複雑である。(例えば旋回中にも車両の進行方向に慣性力が働いている)。上記の説明は「分かりやすさ」を考慮して、「旋回中の遠心力」と「進入時の慣性力」を、あえて分けて書いており力学的には厳密な説明ではないが、感覚的(実際の運転における感じ方)には概ね合っていると考えている。(私の経験上)。


【タックインとパワーアンダー】

●一定速度走行時の荷重配分

一定速度走行時(加速も減速もしていない状態)では、右図のように、停止中と全く同じ前後の荷重配分となっている。

注)実際のFF車の停車時荷重配分はフロントのほうが重くなっているが、説明を分かりやすくするため、前後荷重配分=50:50のイメージで図を描いている。


●タックインとは

車の減速時には、右図のようにフロントに荷重が移動する。

旋回中、アンダーステアが出ている状態で、アクセルを緩めたりブレーキを踏んだりして減速すると、フロントに荷重が移動することにより、フロントタイヤのグリップ力が増すため、急激に車が切れ角通りに「曲がろう」とする。この現象がタックインである。

当然ながらタックインは上で述べたフロントタイヤのグリップ力の増加と共に、速度が低下することにより遠心力や慣性力など「曲がらまい」とする力が弱まることも同時に働いて、より「曲がろう」とする訳である。

また、タックイン作用時の表現として「インを向く」とか「内側にすっとぶ」などという表現をするが、冒頭で述べた通り、FF車は基本構造上、ハンドルの切れ角よりも内側に曲がることは、基本的には無い。

なお、タックインは前輪が駆動しているために起こる現象であることから、FR車などの後輪駆動車では発生しない。


●パワーアンダーとは

車の加速時には、右図のようにリアに荷重が移動する。

旋回中にアクセルを踏み加速すると、リアに荷重が移動しフロントのグリップ力が落ちることから、アンダーステアの度合いが大きくなる(曲がらなくなる)。また状況によっては前輪がホイルスピン(空転)を起こして、よりグリップ力を失い、曲がらなくなる。この現象をパワーアンダーという

これはタックインと全く逆の状態であり、フロントの荷重が抜けることに加えて、速度が上がることによる遠心力等の増加も加わるので、より「曲がらない」状態となる。

なお、パワーアンダーという言葉はタックインほど定着した言葉ではなく、呼び方は他にもあるかも知れない。

なお、同様の現象はFR車など後輪駆動車でも起こるが、後輪駆動車の場合は後ろから押されながら曲がらなくなるため「プッシングアンダー」と呼ばれており、FF車のパワーアンダーとは、「フロントの荷重が抜けることによるアンダーステア」という点が同じであるだけで、挙動は全く異なるそうである。


注)上図の内、「タックイン」の図(前下がりの図)は概ね現実に近いが、「パワーアンダー」の図(後ろ下がりの図)は分かりやすさのため、現実よりも強調して書いている。FF車の場合サスの柔らかさにもよるが、前輪が駆動すること及びリア重量が軽いことから、加速時においても極端に後部が沈み込むことは無いと考えられる。(後輪駆動車の場合は、上図のような沈み込みが起きる)。なお、見た目的に分かるほど沈み込むかどうかは別として、本文中に書いたとおり、加速時に前輪の荷重が多少でも抜けるのは、間違いない事実であると考えられる。


【さいごに】

FF車の運転は、FR車などの後輪駆動車と比べて、非常にシンプルで簡単である、と私は思っている。まあ、後輪駆動車は本気で運転したことが無いので、想像であるが、後輪駆動車の運転は、非常に複雑だろうと感じている訳であり、それに比べてFF車は、本当にシンプルであると思っている。

基本的にFF車は曲がらない。曲がらない車をいかに「曲げる」かである。タックインとは、「現象」を差す言葉であるが、しばしば「技」としても語られる。ようは、オーバースピードでコーナーに突っ込んでもタックインで無理に「曲げる」訳である。

なんせ、FF車は操舵も駆動も前輪であるため、前輪の感覚さえ飲み込めれば、ある程度の走りはすぐに出来るようになる。非常にシンプルなのである。

ただし、あまりにも強引なタックインを行うと、内側タイヤが浮き上がるインリフトや、リアが滑るテールスライドが起こる。ここまでやると、かなり恐い思いをすることになる。

なお、テールスライドなどを伴う派手なタックインや、極端なパワーアンダーを一般道で味わうのは、どう考えても危険運転である。サーキットなど安全な場所で行うべき範疇であろう。

しかし、派手な運転はしなくても、適度な速度でワインディングを流すだけでも、ただ無為に流すより、頭にタックインやパワーアンダーなどの力学的な挙動をイメージしながら走るのは、楽しいものである。と、私は考えているのである。そのイメージが正しいか間違っているかは別として・・・。

最後に、上で「FF車は曲がらない」と書いたが、なぜ後輪駆動車と比較してFF車は曲がらないのかは、実は本文中で述べた「パワーアンダー」と密接に関連した話で、かつ実はパワーアンダーの話はもっと奥の深い続きがある。しかし、その部分の話まで突っ込むと「実際自分で走行した感覚」からは離れた部分の、いわゆる「机上」の話題となるため、今回は触れなかった。今後、述べてみたいと考えている。 
追記:ページを作成しました→コチラ

ここを読んで頂いた皆様、本気で走りこむ場合はサーキット等に行くものとして、一般道ではくれぐれも安全運転を宜しくお願い致します。


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