【基本は慣性力と遠心力】
まず、慣性力の説明から。
質量mの物体が等速直線運動(加速も減速もせず真っ直ぐ動く運動)をしている時には、摩擦などの抵抗が生じない限り、同じ速度で同じ方向に動き続ける。(右図の上)。
その物体を止めようとする力(一般的には制動力、専門的には減速でも「加速度」)が働くと、その物体には「そのまま動き続けようとする力」が動いていた方向に働く(厳密には「働く」のではなく、観測上発生する「みかけの力」)。この「動き続けようとする力」が慣性力である。
慣性力の大きさ=質量m×加速度である。
次に遠心力の説明である。
右図のような、糸につながれた物質が円運動をしているとする。
運動の方向は円周上であるが、物体には常に真っ直ぐ(糸=腕の方向に直角方向)動こうとする慣性力が働いている。
運動方向(=円周)に対して、外側にズレようとする慣性力が働くが、物体は糸に引っ張られて円周を動き続ける。 この「運動方向」と「慣性力」のズレの結果として、外向きの力である遠心力が発生するのである。
以上の説明は、基本事項であるため、復習がてら、専門記事等を確認しながら書いたので、ほぼ間違っていないと思う。「ほぼ」と付けたのは、厳密には慣性力と遠心力の関係は、そもそも数式なしでは説明は無理であり、更に厳密には遠心力も慣性力の一種であるため、その事実を完全に踏まえて「言葉」で書くと、非常に意味の分かりにくい文章になると思われるため、大きく間違っていない程度に「簡素化」して書いているためである。ちなみに私は物理が特に詳しい訳でもないので、数式の意味を完全に把握するのは困難である・・・。
【オーバーステアとは?アンダーステアとは?】
これより以降の文章は、素人kazu-Tによる「うんちく」である。大きくは間違ってはいないと思うが、完全ではないだろうし、正確性を調べる術さえ知らない。これを念頭において、ご一読お願いします。
注)これ以降の内容は全て、前後のタイヤは同じ性能である前提で記述しています。
●力は前後別々に働くのではないか?
上の「球体」の例では力の作用点が「一点」だが、車の場合、前後の車軸で支えられているので、前後別々に力が作用すると思う訳である。
なお、正確には当然「左右」にも分かれている。なぜなら遠心力が働くことにより、左右の荷重配分が異なるからである。タイヤに掛かる荷重が慣性力や遠心力の源となる質量mと同じものであることは間違いないため、左右の荷重が異なれば、そこで発生する慣性力や遠心力も異なる訳である。
従って厳密には4輪全てを独立させて考えを進めるべきであるが、そんなことをすると素人kazu-Tの頭が付いていく訳がないため、以降は「前後」にだけ分けて考えを進めるものとする。
●アンダーステアの状態
車の構造などにより、フロントのほうがリアより重い状態の場合、荷重=質量の重いフロントのほうが、遠心力が大きくなるはずである。従って、この時にはフロントのほうがリアよりも外側に振られる量が大きくなり、ニュートラルな状態の軌跡よりも外側に進むと思われる。
これがアンダーステアかな、と思う訳である。
●オーバーステアの状態
上と全く逆の状態で、加速中などにリアの荷重が大きくなった場合は、ニュートラルな状態よりも内側に進むと思われ、この状態がオーバーステアかな、と思う訳である。
注)以上のアンダーステア、オーバーステアに関する内容は、以前に掲示板か何かで似た内容の文章を読んだことがあり、それと今までの自分の知識を掛け合わせて考察し、まとめた内容です。
ちなみにその文章は言葉のみで力学がうまく説明されており、非常に感銘を受けました。
これより以降の内容は完全に独自で考察したものです。
【冒頭の説明の質量mの物体の円運動と、実際の車の旋回運動の相違点】
以上までを読んで頂いたかたの中には、「あれ、何かおかしいな?」と思われるかたも居ると思われる。その違和感の原因は、冒頭の説明の質量mの物体の円運動と、実際の車の旋回運動の違いによるものと思われる。その相違点をまとめると、下表の通りである。
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質量mの物体の円運動 |
実際の車の旋回運動 |
| 運動を続ける力 |
・摩擦や空気による抵抗がゼロの状態を想定している。
・従って、最初に力を加えてやれば、後は力を全く加えることなく運動を続ける。
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・路面との摩擦抵抗や空気抵抗などの抵抗力が存在する。
・従って、抵抗力により常に減速しようとしているため、運動を続けるには、力を加え続ける必要がある。
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| 回る(曲がる)力 |
・糸による「向心力」で円運動を続けており力、物体自身には曲がるは必要ない。 |
・車が糸で繋がれている訳ではないため、車が自分自身で曲がる力を発生する必要がある。 |
以上の通りである。ようは、上で述べたアンダーステア、オーバーステアの状態が、質量mの物質のような「等速円運動」をしているのであれば話は単純なのだが、実際の車は進み続けるための駆動力、および曲がり続けるための旋回力を、路面とタイヤの摩擦力で発生しながら走っている。かつ、摩擦力でそれらの力を発生するがゆえの結果として、慣性力や遠心力が発生する訳である。この点が理解できれば、アンダーステアやオーバーステアの理解が、かなり鮮明になってくると考えているのである。
以上の摩擦力(=タイヤのグリップ力。以降は「グリップ力」と称す)と慣性力、遠心力の関係を、FF車に関して考察したものを述べるものとする。
【FF車の基本】
●FF車の基本構造
FF車(前輪駆動車)とは、エンジンの力を前輪に伝え、前輪が駆動力となる形式の車である。
ハンドルによる操舵も当然ながら前輪で行うため、駆動力、旋回力の双方とも前輪で担っている。後輪は「支え」のみの役割である。
車が前に加速すると、荷重はリアに移動する。ようは、加速中は停止中や一定走行中と比べてリアが重くなる訳である。
しかしFF車は駆動力がフロントにあるため、加速中でリアに荷重が移った状態においても、ある程度フロントに荷重が残っていないと、路面との摩擦力が得られず十分な加速が出来ない。従ってFF車の基本として、右図に示すように、元々の荷重配分がフロントヘビーの状態で設計されている。また、FF車はミッションやデフがフロントに集中するため、必然的にフロントヘビーになるという事情もある。
●FF車の前輪のスリップアングル
車のタイヤは右図のような力の関係となっている。ハンドル操作による旋回方向に対して、直進方向の慣性力が影響し、実際の進行方向は旋回方向より外側に振れる。言い換えれば、冒頭の質量mの例で説明した遠心力がタイヤを外側に引っ張っている訳である。この外側に振られる角度θをスリップアングルと呼ぶ。
スリップアングルは車の駆動形式や前輪、後輪に関わらず発生するが、FF車の前輪に関しては、力関係が非常に複雑となっていると思われる。
FF車の前輪は、駆動力(前に進む力)と旋回力(曲がる力)の双方を担っている。それは、前輪のグリップ力(摩擦係数×荷重)を、駆動と旋回で分け合っている、と考えられる訳である。グリップ力はタイヤの摩擦係数とタイヤに掛かる荷重で決まってしまうので、駆動力を大きく利用している時は旋回力が小さくなるし、また逆もまた然りと思われる。
従って、アクセルを踏み込んで加速する場合はグリップ力の多くを駆動力に回すので、旋回力は小さくなる。従って旋回中にアクセルを踏み込めば、踏んだ瞬間に車軸と直角方向(慣性力の方向)に駆動力が大きく働き旋回力に回すグリップ力が減り、かつ速度も上がって慣性力も大きくなるため、加速すればするほどスリップアングルが大きくなる=曲がらない状態となる、と考えられる訳である。
以上がFF車の大きな特徴であると考え、次にFF車の挙動を考察する。
【FF車は常にアンダーステア】
右図の力@〜Dおよびスリップアングルθを用いて、一定速度で旋回した場合、旋回中に加速した場合、旋回中に減速した場合の3ケースを考えてみる。
●一定速度で旋回した場合
@前荷重・・・大 (一定速度では停車時と同じ荷重配分となるため、FF車ではフロントヘビーな状態)
A後荷重・・・小 (同上)
Bグリップ力・・・中 (標準的な状態)
C前部遠心力・・・大 (遠心力は荷重の大きさに比例するため)
D後部遠心力・・・小 (同上)
以上のような力の配分となっている。これはまさに上で述べた「アンダーステア」の典型的な状態であり、速度が上がれば上がるほど、また回転半径が小さくなればなるほど、リアに対するフロントの遠心力の差が大きくなり、かつフロントタイヤのスリップアングルθが大きくなることから、アンダー傾向が強くなってゆくと考えられる。
●旋回中に加速した場合
@前荷重・・・中 (標準的な状態より荷重が後方に移動するため、フロントヘビーであったものが中立に近づく)
A後荷重・・・中 (同上)
Bグリップ力・・・小 (標準状態よりフロントの荷重が減るため)
C前部遠心力・・・中 (遠心力は荷重の大きさに比例するため)
D後部遠心力・・・中 (同上)
以上のような力の配分となる。フロントの荷重が減ることにより遠心力によるアンダーは軽減されるが、その代わりにフロントのグリップも低下するため、タイヤが空転しない程度に「前に進む」ためのグリップ力を消費すれば、「曲がる」ためのグリップ力が減り、スリップアングルθが大きくなりアンダー傾向となる。そして加速すればするほど速度が上がるのでタイヤの慣性力が大きくなり、よりスリップアングルが大きくなりアンダー傾向が増す、という循環になると考えられる。
●旋回中に減速した場合
@前荷重・・・極大 (元々フロントヘビーな状態から、更に荷重移動による荷重が載るため)
A後荷重・・・極小 (同上)
Bグリップ力・・・大 (標準状態よりフロントの荷重が増えるため)
C前部遠心力・・・極大 (遠心力は荷重の大きさに比例するため)
D後部遠心力・・・極小 (同上)
以上のような力の配分となる。加速した場合と全く逆の状態である。前輪のグリップ力が最も稼げ、高い速度でも横方向のグリップ(=曲がる力)が確保出来るが、フロントに極大の遠心力が働いているし、そもそも減速しているのでスピードは下がるため、「早く曲がる」ことは出来ないのである。
●まとめ
以上の3ケースを簡単にまとめると、下表の通りである。
| 一定速度で旋回 |
旋回中に加速 |
旋回中に減速 |
| ・FF車の基本特性であるフロントヘビーにより、基本的に遠心力によるアンダー傾向となる。 |
・フロントの荷重の軽減により遠心力のアンダーが軽減されるが、その分フロントの荷重が抜けるので前輪のスリップアングルが大きくなり、トータルではアンダー傾向となる。 |
・加速と全く逆の状態となり極度のフロントヘビーとなり、前輪のグリップが最も稼げる状態となるが、そもそも減速している訳なのでスピードは上がらない。 |
FF車の運転のテクニックとして、タックインというものがある(詳しくはコチラ)。ようはアンダーステアで旋回中に故意に減速し、フロントに荷重を移して前輪のグリップを増すことにより車の向きをインに向けるテクニックである。
しかしタックインを使っても「オーバーステア」になる訳ではないと考えられる。繰り返しになるが「減速」しているということはスピードが落ちている訳なので、そのまま続ければ止まってしまう。タックインでインに向けた後は、即座に加速に転じる訳である。この「加速」に転じた時点で上記のアンダーが発生し、その度合いは加速度を大きくするほどアンダーも大きくなる。従ってコーナー区間のトータルで見れば、FF車は常にアンダー傾向で曲がっていることになると考えられる訳である。なお、加速時に生じるアンダーステアはパワーアンダーという(これも詳しくはコチラ)。
【さいごに】
冒頭でも述べたとおり、ここで述べた内容は、素人による全くの「想像」であり理論的に正しい保障はありません。ご了承願います。
なお、今回述べた理屈を展開してゆけば、FRなどの後輪駆動車に関する記述も可能ですが、私は後輪駆動車を本格的に運転したことがないため、本当の「机上の空論」になってしまう可能性があるため、記述はFF車限定としました。
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