聖使徒福音記者ルカのイコン       
 ルカは、七十門徒の一人だったと言われています。アンテオケ生まれのシリヤ人で、医者でもありました。ルカは、福音書の他に「使徒行実(使徒行伝)」も記しました。それによれば、ルカは、パウェル(パウロ)の同行者でした。エマオに行く途中で復活のハリストスと出会った二人のうちの一人がルカであるとも言われています(ルカ伝24章)。
 ルカ伝は、歴史的、文学的特徴をもっており、全世界に向けて福音が拡大することを強調しています。つまり、異邦人向けに記された福音書だと言われています。また神・聖神の働きが強調されているのも特徴です。
 伝承では、ルカは生神女マリヤのイコンを最初に描いたと言われており、左のイコンはそれに基づいたものです。


♪最初のマリヤのイコン 

 一番最初に生神女マリヤのイコンを描いたのは聖ルカであり、聖神゜降臨の後、彼は三つの形を描いたと言われています。一つは「エレウサ(慈愛)」と呼ばれるもので、自然で人間的な感覚が強調されています。もう一つは「ホディギトリア(導き)」と呼ばれるもので、見る者をマリヤがハリストスへと導きます。三つ目は、マリヤだけを描いた形と言われています。これは「デイシス」と呼ばれるとりなしのイコンの一部と解釈できます。ここに掲載したイコンは16世紀のロシアのものですが、この中でルカは「ホディギトリア(導き)」型のマリヤを描いています。

♪ルカ
 

 ルカは椅子にこしかけ左手に皿(パレット)を持ち、右手にペンをもっています。この腰かけも足台もそれからキャンバス台も、ルカの時代のそれではないということは注意しておかなければなりません。イコンにおいてルカは、普通、若く描かれています。整った髭とパーマをかけたような髪の毛は、ルカが医者であったことを表しています。

♪天使
 

 天使がルカの背後にいて右手を伸ばし、何やら指示している様子が描かれます。こうした天使の姿は、古代末期における哲学者や詩人などの著者像(ミューズなどの擬人像がかたわらに立って霊感を授けている)に起源をもちます。イコンにおいては、ルカの勝手な思い付きや考えでマリヤを描いたのではなく、天使すなわち神の力がルカにイコンを描かせたのである、と歌っているわけです。

♪マリヤ
 

 キャンバスの前に立っているのがハリストスを抱いたマリヤです。マリヤの胸の真ん中あたりにハリストスがいます。これは「しるしの生神女」と呼ばれるマリヤのイコンの型です。つまり、ルカは、前に立っているマリヤとハリストスを見ながら彼等を描写しているのではありません(ハリストスが幼い頃にルカがマリヤを描いたのではない!)。イコンは、史実を伝えることより真実を伝えることに忠実です。つまり「ルカはこのようにマリヤのイコンを描いた」というのではなく、「マリヤとハリストスを描くことは福音に基礎がある」という真実を、このイコンは高らかに奏でています。

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