東方奇談

6  火を吐く天神のはなし
更新日時:
H17年3月31日(木)

 菅原道真が死して後、延暦寺の座主法性のもとに、あるとき、未明に訪問者があった。
 法性は、このような時間にと、いぶかしんでいると、闇に浮かび上がる、衣冠束帯姿の貴人。これはひとならぬのではと、持仏堂に招き入れると、果たして、亡き菅丞相である。法性、心を落ち着かせて用向きを尋ねれば、道真曰く「これより、禁中に参って、報復せんと思うが、叡山の法力で、わが報復を止めることなきように」との依頼であった。
 法性、恐ろしくもあるが、心を振るわせて言い放つよう「叡山は京城の守りが本分でありますゆえ、この国に住みながら帝より勅宣あれば、たとえ殺されようとも、どうして行かないわけにまいりましょうか!」。これを聞いて、道真、苦しげにうなる。法性は、「咽が渇いておられるのでは」と、道真に棗を勧めたが、口にした棗を吐き出し、その棗は焔となって、扉を焼いた。そして、そのまま、道真の姿は消えてしまったのである。
 その後、宮中にすさまじい落雷があり、公卿が逃げ惑ったが、ただ一人、左大臣時平のみ、太刀を抜き放って、天神を威嚇したと伝えられる。
 そして、法性は勅宣を受けて、波が逆巻き、反乱する鴨川をモーゼよろしく波を割って渡っ駆けつけた。
 道真がついに復讐を果たして時平を取り殺すことに成功したのは、道真死後6年目の後日談。
(北野天神縁起)

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