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イサベルとアルフォンソ
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イサベルさんは、前項登場のファーナ女王のお母さんです。
この人は生まれながらのカスティーリア女王でありますが、苦労をしています。というのも父王の後を継いだ異母兄に疎まれ、生母と弟と共に、宮廷から遠ざけられ、小さなお城で(半ば幽閉状態で)、王家の者とも思えん質素な生活を強いられる。こんな境遇が、生来聡明であった彼女をして、思慮深く、道徳心の強い娘に育てたと思われます。また、徐々に精神に異常をきたしてゆく母親を抱えて、2歳年下の弟との絆を、よりいっそう強めてゆく、絵に描いたような、けなげな姉であり、よく出来た可愛い弟の図です。
弟のアルファオンソ君は、カスティーリア王国の、お家芸ともいうべき内乱によって、異母兄と対立する形で、王として即位します。この即位に対しても、信仰心が厚く、神より与えられた神聖な王位を、武力で争うという行為には賛同しかねるイサベルではありますが、それでも弟への愛情ゆえ、弟の陣営に駆けつけます。アルフォンソもイサベルに負けず劣らず利発な少年で、周囲の期待を一心に集める、好ましき少年王なのであります。
ところが、この王国の希望の星が、15歳にも満たない若さで、突然死んでしまいます。イサベルは、後年、親しい身内を次々と亡くしてゆくことになるのですが、これが初めての、しかも最愛の弟の死で、彼女の嘆きは、相当に深い。アルフォンソの死因については、毒殺説もありますが、確たる証拠はありません。この後、アルフォンソ陣営は(まあ、兄王に反乱しているわけですから)姉のイサベルを,女王に担ぎ出そうとしますが、イサベル当人がそれを拒みます。曰く「兄が生きている間は、兄こそが神が定め給うた唯一の王である」と、17歳の小娘とも思えんセリフ。内乱による国土の荒廃もしのびないという理由もあろうけど、彼女には彼女なりの勝算があったと思う。
異母兄には王女が1人いますが、この娘は不義の子・・・ですから、正統な王女である自分、イサベルこそ、兄が死んだら、それこそ棚ぼた式に王冠がやってくる、と。なんせ、戦乱の時代ですから、元気な人でも、何が原因で何時コロッといくかわからん・・。で、ほんまに、誠に都合よく兄が死に、ついに彼女は、カスティーリアの女王となりました。
そして、若き独身の女王は、自らの算段で隣国アラゴンの王子フェルナンドと結婚。ここに、両人の婚姻によって2国は、いわば合併し、スペイン王国としての繁栄の基礎を築くことになってゆく・・・と、このへんが前半生のヤマ場だなあ。なかなかにドラマチックな展開だわ。「アルファオンソ。あなたの分まで、しっかり生きていくわ。私を見守ってね・・。」なんて、言ったかもしれない。
今回のテーマ、姉と弟ってことになると、若死にのアルファオンソ君は、いいことも悪いことも、する間もなく死んでるから、話としては、これで終わりなんだけど、その後のイサベルさんの話をさせてね。長くなって悪いけど。
さて、イサベルは、夫と2人、カトリック両王として、国政に携わる傍ら、一男四女に恵まれ、ようやく家庭的な幸せも得られます。夫は、よくできた妻を持った男の常として、ちょこちょこと浮気をするも、深みにはまることはなく、そのへんは妻を立てることを知っている彼は、なかなかの遊び功者。
イサベルの懊悩は子供たちのこと。一人息子は病弱で早死にするし、期待をかけた孫息子にも先立たれる。国の繁栄のためにヨーロッパの王室のあっちこっちに嫁がせた娘たちの中で、まずまず幸せといえる人生を送ったのは、ポルトガル王日となった三女だけ。しっかりもので頼りにしていた長女は若死にするし、イギリス王妃となった四女は、王妃の座を追われる(誰あろう彼女の夫こそ、かのヘンリー[、ちょうちんブルマーの君よ。あ、これはファーナのとこでも書いたな)。そして最もイサベルを悩ませ、苦しめたのが、この二女のファーナ。不実な夫に裏切られ続けても、まとわりつくような愛情を注ぎ、出口のない愛ゆえの狂気の世界に陥っていく吾が娘の姿は、イサベルの心身を痛めつけることになる。
私は、イサベルさんのことは、何事もきちんとこなす完璧主義の面白みのない女と、長年思ってきましたが、最近は、トシをとったせいか、幾人もの肉親を失う悲運に見舞われ、娘の姿に心痛めつつ、それでも国を運営し続けたこの人のつらさ、偉さが、ちっとはわかるようになったのか、ほんに気の毒なお方やと思うようになりました。ほんでも、まあ、やっぱ、お友達にはなれんけど(H)。
※参考文献 「スペイン女王イサベル」小西章子 朝日文庫
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