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今こそ語られるトロイア戦争の真実・・・って・・もう飽きた?
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うち、アンドロマケいいますねん。
もう、ええ歳のおばばやけど、若い時は、そらあ綺麗どしたんえ。
うちのこと知らんて? ほんでもトロイの名前は知ってはりまっしゃろ。うちは、あっこで王妃やってましてん。まぁ、正確に言うたらトロイの第一王子ヘクトルの妃やったから、王妃やのうて、皇太子妃、プリンセス・オブ・ウェールズちゅうやつ、あれみたいなもんでしてん。
あのまま何事もなかったら、今頃は、古都トロイアの王妃として、栄耀栄華をきわめとったはずやのに、ほんま、人生何があるかわからしまへんで。
♪人生いろいろ、♪男もいろいろ・・言いますけど、うちの波乱万丈の人生、ちょっと聞いておくんなはれ。
アンドロマケの結婚
ええと、やっぱり男はんのことから言うた方がええな。
うちはこれでも3回結婚してますねん。2度目のんを「結婚」とは言いたぁはないけど、まぁ三遍、男はんをかえて子供を産んだ、いう意味では結婚どすやろな。
最初の夫がトロイのヘクトルどした。
この人とは遠縁の間柄で、歳はちょっと離れとったけど、生まれながらの婚約者どしたから、うちは物心つくかつかんかの頃から、大きいなったらヘクトル兄ちゃんのお嫁さんになるねん言うて、12の歳に嫁いだんどす。あの人はほんまに優しい人どした。お義父はんのプリアモス王も、お義母はんのヘカベ王妃も、ほんにええ人で、うちは幸せどした。
ヘクトルには、ぎょーさん弟や妹がいてましたけど、何をやらしても、あの人はダントツにできる人やったから、弟らは兄ちゃんに逆らおう、なんて気もないし、ヘクトル兄ちゃんに任せとったら安心や、いうて、うちも含めて兄弟姉妹で遊び暮らしとったんどす。あの人はそんなうちらを「みんなまだ若うて、子供やからしゃあないなぁ」って、笑って一人で国を背負って、苦労してはったんどすなあ。あの人の髪が薄かったんはそんなことも原因やったんやろか。
今になって後悔しても遅いんやけど、あの数だけはぎょうさんおった弟らを、もうちっと役に立つように鍛えとったら、あないなことには、ならんかったんちゃうやろかと、ほんま、今更に思いますえ。誰もかれもがヘクトルに頼るばっかりで、へのツッパリにもならんとは、あのこっちゃ。
スパルタ王妃ヘレネ
そんなヘクトルの弟の中でも極めつけのあほのパリスはんが、ヘレネを連れて帰ってきはった時は、さすがのうちも開いた口がふさがらんかったわ。
ほんにあの子は、育ちのせいか、いっつも問題起こす子で、そのたんびにヘクトルが尻拭いしてましたけど、お義父はんが、一度は捨てよとしたこと悔やんではって、甘いもんやから、本人は好き放題してましたんよ。スパルタへ出かけたんも、こっちで具合の悪いことしてもて、さすがにキレたヘクトルに、ほとぼりのさめるまで帰ってくるなと言われて、ちょうど交易でスパルタ行く船に乗せられたんどす。これに懲りてちょっとはおとなしいなるかいなと思う間もなく、ヘレネ積んで帰ってきはったから、あきれまっしゃろ。
ヘレネいうたら美人の誉れ高いスパルタの王妃や、いうことぐらい誰でも知ってますがな。そんなややこしいもん、早よ帰せいうてヘクトルはパリスに詰め寄ったんどすけど、この時も、お義父さんが甘うて、結局、ヘレネはトロイに居ついてしもうたから、ええ口実をアカイア方に与えることになってしもたんどす。
あっこが、ずぅっとうちの国、狙ってたんは、これまた皆が知ってることでおましたやん。そんなご時世やのに、よけいなことしてくれて、ほんまあの子はろくなことせえへんで。全くもって縁起の悪い子やわ。
トロイア戦争
「トロイの王子に拉致されたスパルタ王妃を奪還する」いうんが、アカイア軍のスローガンどしたけど、きっとあのセコいオデュッセウスはんあたりの創作に決まっとりますがな。あの人については、うち、言いたいことがよ〜けあんねんけど、あとでまとめて言わして、もらいますわ。
え、ヘレネのことどすか? そら世界一の美女でっしゃろ、女のうちが見ても別嬪はんどしたわな。せやけど、あの人さえトロイに来んかったら、あないなことにはならへんかってんから、ええ気持ち持つことはでけしまへんぇ。
パリスもパリスやけど、ええ歳して子供もおるのに、パリスに「お持ち帰り」されたヘレネもどうかしてるわ。けど、なかなかに、お見かけどおりのお人やなかったみたいどすわ。このことも、あとで言わせてもらいますわ。
話を戻すと、アカイア軍はトロイと事を起こす機会を待っとったから、何年も前から準備しとったんどすやろな。ヘレネのことが表沙汰になったとたんに、あっという間に船団組んで攻めて来よりましたんや。そら仰山の数でおました。
総大将のアガメムノンをはじめ、ヘレネの夫のメネラオス、武名高いアキレウスに、両アイアス、ディオメデス、長老のネストル、智恵袋?オデユッセウス、ヘラクレスの息子トレポレモス等々、まあ、それはそれは豪華絢爛、ものすごいメンツで攻めてきはった。
対するトロイ軍といえば、良くも悪くもヘクトル頼み・・・。アカイアのスーパースター軍団に対して、たとえばアイネイアスなんか、地元でこそ、名を知られとるけど、アカイア軍に対抗できるメジャー級の知名度ちゅうたら、そらもうヘクトル一人どすがな。
ヘクトルの苦労
そんなわけで、上はプリアモス王から下は一兵卒にいたるまで、全トロイの期待と責任を一心に背負っていたヘクトルの苦労とプレッシャーは相当やったと思います。あの人はうちにも弱いとこは見せませんでしたけど、日々髪が抜けていくんやもの、わかりますがな。
うちに出来ることは、朝、戦に出て行ったヘクトルが夕方無事な姿で戻ってくるのを祈ることと、お風呂や食事の支度をすること、息子のアステュアナクスが機嫌よおして、あの人の慰めになるようにすることだけどした。
ヘクトルには、この戦が不利やいうことは最初からわかってましたんでっしゃろな、秘密裏に戦争終結に向けての交渉もやっとりました。
そいれはもう、大変な日々で、昼は戦闘、夜は交渉と、まるでどこかの戦う選手会長さんのよう・・・。この秘密交渉には、アカイア側からはオデュッセウスはんが出てくるのが常どした。あの人とヘクトルはウマが合うたんどすやろな、時々、うちも呼ばれましたけど、後で思うに、ヘクトルはオデュッセウスはんにうちを引き合わせて、トロイがあかんようになった時、うちら母子のことを頼むつもりやったんどすやろな。オデュッセウスはんやったら、トロイのヘクトルの妻としてのうちの矜持を踏みにじるような真似する人やないって思うてたんちがいますやろか。
トロイの陥落
そんなヘクトルの健闘も及ばず、あの人がアキレウスに殺されてからトロイが陥落するまで、うちはもう悲しうて悲しうて、何がなんやらよう覚えとりませんが、ほんま、あっという間どした。
世にも有名な木馬の計にひっかかっての陥落の後、うちら生き残りのトロイ人や、数ある財宝を分配するいう段になって、うちはようやくトロイを落とした第一功労者がオデュッセウスはんやということを知ったんどす。
そんときウチが内心「しめた」と思ったことは事実どす。あの人とはヘクトルを介しての仲やし、さっきも言うたように、オデュッセウスはんにもらわれたら、うちと幼いアステュアナクスは、トロイの末裔としての誇りを持ったまま生きていくことが出来ると思うたんどす。あの人がうちを選んでくれると確信しとったんどすわ。
そやけど、オデュッセウスはんは、お義母はんを選びはった。なんでも後で聞いた話では、オデュッセウスはんは、えらい恐妻家で、お国の奥さんのとこへ、うちみたいな若い美人を連れて帰ったら、ややこしいことになるんを避けて、すでにおばばで問題なしのヘカベ王妃を選びはったらしい。
そんなわけで、うちはあろうことか、ネオプトレモスの分け前いうことになったんどす! よりにもよってネオプトレモス! うちの大事なヘクトルを殺したアキレウスの息子! しかも、うちとヘクトルのたった一人の子供のアステュアナクスを無残にも、城壁から投げ落として殺した男どすえ!!
うちは、こんとき城壁から身を投げて死んでしまおと思いました。
けど、うちはこれでもトロイ王家の血も流れてます。王家の男連中が、ほとんど死んだり殺されたりして、若い王女までもが乙女のまま生贄にされたりする今、うちまでが死んでしもうたら、ほんまに何も残らしまへん。女は子供を産むことができますんや。せや、うちは、トロイの血を引く子供をぎょうさん産むことで生きながらえたる、と、こう考えることにしたんどす。
ネオプトレモスとヘレノス
幸いにというべきか、ネオプトレモスはすぐにうちに飽きて、次なる獲物ヘルミオネ(ヘレネの娘どす)を求めて出て行ったきり、ヘルミオネの婚約者に殺されたとか、デルフォイで神域を穢したんでアポロンさまの怒りに触れて殺されたとか、何やしらんけど、ま、あの人に関する限り、うちはええ気味や、身から出たサビやと思いますえ。ほんま、考えなしの粗暴なだけの「あほ」どしたわ。
そんなわけでうちは、また未亡人になってしもうて、もう男はんはええわ、と思うてましたけど、ネオプトレモスと一緒に行動しとったヘレノス(彼もヘクトルの弟の一人どす)から求婚されて、まぁ、この人は正真正銘のトロイの王子やったし、幼馴染でもあるし、2人してトロイの血筋を伝えて、各地に散らばってるトロイ人を支援して行こうか、ということで一緒になったんどす。
ヘレノス本人には、ときめくことなんてなかったけど、うちもそないいうても、もう若うないし、残る人生、できるだけ穏やかに子供らを育てながら暮らしたい言うんが本音どした。そうやってここモロッソイの地で暮らしてます。
オデュッセウスの策謀・ヘレネの陰謀
あれから、オデュッセウスはんとは、何べんも会いましたけど、あの人は根っからの商売人どすな。昔はそないにも思わなんだけど、えらい調子のええお人どすわ。
たまに、奥さんのペネロペイアはんを連れてきてはるけど、ヘレネの従姉妹はんやいうだけあって、かなりの別嬪さんどす。
ペネロペイアはんは、確かにあのオデュッセウスはんが、頭があがらんという、見るからに頭のよさそうな、気の勝ったきついおなごはんやけど、ヘレネちゅうのは、案外、要注意どっせ。
男はんは、あの人の美貌に目ェがくらんでしもて、本質は見抜けへんのとちゃうやろか。あれは一筋縄ではいかん、えろうしたたかな女どすえ。
ヘレネがトロイに来たんは、勿論パリスが惚れてしもうて、無理矢理連れてきた、言うことになってますけど、ヘレネのほうでも、スパルタでの生活に飽き飽きしとって、アバンチュールというか、なんぞ刺激を求めてたとこに、あほなパリスがやってきたというわけ。
ところが、いざトロイに来たら、男はんからはちやほやされるけど、そんなんどこにおってもそうやし、今までは、スパルタの王妃やったから、名実ともに、あの人が国で一番の女、ということどした。
けど、トロイでは、言うても、パリスは、よ〜けおる王子のうちの一人ですやん、どうがんばっても、王妃のヘカベ、皇太子妃のうちに続く三番目どっしゃろ。
あの人にはこれが気に入らんかったんどすわ。こう見えても、うちかて12の歳から皇太子妃やってますねんで、なんぼ美人やいうたかて、年増の、昨日今日来た弟の嫁なんかに、負けるわけにいかしまへん、ふんっ!
そんなこんなで、あの人には面白うないことが多かったんどすやろな、色んな男はんと遊んではったけど、あの人がほんまに欲しかったんはヘクトルや、いうことぐらいはちゃ〜んと知ってましたぇ。
ヘクトルの方にしたら、昼は戦闘、夜は会議で疲れ果ててるとこへ、弟の嫁の誘惑でっしゃろ、面倒ごとはもう沢山いうんが、ほんまのことどしたやろ。
そんなんで、ヘクトルには相手にされへん、戦争はトロイが負けそうやいうんで、ヘレネはどないしたと思います?
えらい長い話になってしもて、すんまへん。こっから先は、オデュッセウスはんに聞いたことですよってに、ほんまにああったことどすねん。
オデュッセウスはんが、ヘクトルとの秘密交渉で、ちょくちょく来てはったことは、最前お話したとおりやけど、ヘレネはこのとき、こっそりオデュッセウスはんにおうて、国に帰りたい言うたそうどす。
オデユッセウスはんにしたら、早いとこ戦争を終わらせたい、それも自分の手柄で終わらせたいって考えてはったから、策をめぐらせはったんどすな。
ヘレネにアキレウスの唯一の弱点を教えたんどすわ。それをヘレネから聞いたパリスがそこを狙って矢を射掛け、ヘクトル、アキレウスと、立て続けに両陣営の勇将が死んで、大騒ぎになっとる、どさくさまぎれに木馬の計を持ち出したと、こういう訳だんねん。
そやけどなあ・・・
ある意味、オデュッセウスはんは、敵も味方も裏切ったということになるけど、とにかく、あの人にしたら、こんな益のない戦争なんか早う終わらせて、商売したい、商売に有利なように自分の名前を売りたい、の一心どしたみたいどす。
あの人もなぁ、悪い人やないんやけど、利害がからむとねえ。ほんでも、愛嬌があるから、いくつになっても、憎めん男はんどすな(え? 女は二枚目に弱いって? いいえ、あのお人は、ご自分で言うてはるほど、男前やあらしまへんで。顔でいうなら、そらぁヘクトルのほうが、断然上やった)。
せやけど、うちも、ヘクトルが死んだあと、あの人やったら・・と思うたこともあったし、あの時、イタケに連れて行ってくれたら、どないなってましたやろ。今となっては、思い出になってしもうたけど・・。
まぁまぁ、ようしゃべったこと、長年溜め込んどったことをしゃべったせいか、なんやらすっとしたわ。脂肪もストレスもためたらあきまへんえ。ためてええんはお金だけ。
年寄りの長話につきおうてくれて、ほんまにありがとさんどした。気ィつけてお帰りなさいや。(H)
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