リンゼイ・ディヴィスの「密偵ファルコ」シリーズを、前項で紹介しましたが、ここは、もうちっと突っ込んでみました。
 ラストには、黄金のティトゥスによる着付け教室も・・・(F)。
2008/1/30
ファルコの世界
 密偵を雇うような、金持ち女は鼻持ちならない・・・・。
 同い年のティトゥス(皇帝の息子で、キンキラキンの悪趣味な黄金宮に住んでいる権力者)にもハラが立つ。
いとしのヘレナも、出会いの初めはメドゥーサのミミズなみ。
 かしましい女ばかりの一族も、ボロアパートも・・・。
  ビンボーな彼には、ローマに、社会に、親族に・・・とにかく・・不満が一杯あるので、その辛らつな他人評!
 この小説は、ファルコが語るという一人称の形式をとっているので、なんとも言いたい放題の面白さ。
 ファルコ名言の数々の一端をどうぞ。



・姉妹・
おれの姉妹たちは、金箔を貼ったばかりの彫像よろしく顔を塗りたくるので、厚化粧の女は見慣れている。彼女たちは、何をやらせてもあっぱれな女たちだ。
 
・ヘレナ・
かの誇り高きヘレナ・ユスティナに比べたら、メドゥーサの蛇だって、ただのミミズにみえる。
 
この性悪娘の父親(カミルス)を責める気にはなれない。身内の女がなにをやらかそうと、男にその責任をとらせるのは酷というものだ。自分が身内の女を抱え込むよりずっと前から、おれにもそのくらいはわかっていた。
 
この女もやはり生身の人間なのだ。おれは彼女の肩にショールをかけてやった。二重に報酬がもらえるとならば、ヤマアラシの背中を撫でることだっていとわない。
 
・ブリタニア女・
顔色が悪く、ずん胴で、蒸し団子に目鼻といった顔立ちだ。それでも、こんなところに長く暮らしていれば、均整のとれた美女に見えてくるからおかしなものだ。

(・・しかし、この皮肉屋ファルコも、ついに生涯の伴侶と認め、ヘレナと恋に落ち・・・・・)
 
・トーガ・
ローマ人のおかしな衣装もこういうときに役に立つ。彼女をひきよせて、肩と肘でおさえ、トーガの余った部分を手早く2人の体に巻きつけた。きっと、建国の父たちは、女を暖めるために、この衣装を考案したのさ・・・。
・おふくろ・
「あたしゃあ、あの子の母親でね」
勇士アイネイアスの代理で、泡の中から現れた美の神ヴェヌスさながらにの威厳を持って答えた。
 
・宮廷の秘書官・
女房の実家の裏庭で、料理人と男色行為にふけっているのを、女房のj母親に見られても、形のよい長い睫をパチリともさせない、そんな印象を与える男である。
 
・宮廷の事務官・
パピルスの虫を絵に描いたような男だ。口を開く前から、他の誰もしないような仕事をして事務局に巣くっている変人に違いない。・・テュニカは薄汚れて、靴の編み上げ紐が片方にねじれている。ベルトは恐ろしくお粗末ななめしで、皮を取ってきた牛がそこでまだ生きているみたいだった。
 
・宮廷の命令書・
皇帝の命令を書いた書記官のすばらしいギリシャ文字は、壺の装飾にしたらさぞ綺麗だろうが、読むのは地獄だった。
 
・姉の夫・
漆喰職人のミコが,生まれてはじめて人の役に立つ事をした。親族が特等席で凱旋行進を見物できるよう、一足先に家を出て、沿道に面した他人の家の前に勝手に足場を組んだのである。造営官の部下たちが見回りに来たときは、すでにデディウス一族全員が、席についていた。
 
マイアが姉妹の中で一番おれに親切にしてくれるが、ファミアという婿を一族に引き入れたことだけがいただけない。彼は戦車レースの緑組の馬の世話をしている獣医だ(ファミアが闘技場で死んで、未亡人になろ。アナクリテスとペトロニウスが争った挙句、妻と別れたペトロと一緒になったが・・・)。
(ヘレナを嫌な目つきで見る男は、みーんな敵だ。それが特に、金も権力もある、独身の見栄えのいい男ならなおさら・・)
 
・ティトゥス・
 やつは腕を組んで、蝶番が壊れかかっているのも知らずに折り戸にもたれている。・・蝶番よ、壊れて、あの見事な紫色のテュニカもろとも、おれの部屋のボロ床に仰向けにひっくり返してやってくれ・・。
 
きれいに剃りあげた顎に一発くらわして、そろった歯並びもろとも、やんごとなき頭蓋の内側にめりこませてやりたいーという衝動的な反応を、おれは非常な努力で抑えた。
 
(兵隊は始末に悪い・・・)
 
・軍団兵・
兵站部長だ。おれに言わせれば、兜に生えた2本の角は、部長級の事務官に滑稽な格好をさせて笑いものにしようという軍団の悪い冗談だ。
 
首位槍兵は、太くて短い首をしていた。宴会では頭突きでハエを殺すのがかくし芸だろうと思うような猪首だ。
 
この若い男は、おれがついぞ好きになれない自信たっぷりのしゃっちょこばったタイプだ。競技選手のような体格と角ばった頭。きっちり巻いたカールに艶出しの毛染めをしている、金ぴかの上級執政武官だ。
 
※写真は、L' IMPERO ROMANOより。
 
 

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